トップページ コラム お客様の要望をスポンジのように吸収し、それぞれの暮らしに合った提案を。[vol.2-設計士水野さん編]
設計士とリノベを語る夜

お客様の要望をスポンジのように吸収し、それぞれの暮らしに合った提案を。[vol.2-設計士水野さん編]

空間を使う人の目的と想いを受け取り、形にするプロである設計士たち。 「数ある設計ジャンルのなかからリノベを手掛けるのはなぜか?」「今とこれからの住まいのあり方って?」など、普段は聞くことができない設計士目線でのリノベに関するあれこれを聞いてみました。

目次

身体中に電流が走り!?建築・設計の道へ

Quma 設計士になられたきっかけは何だったんですか?

水野 小さいころ、ブロック遊びが大好きだったところから始まりました。

印象的だったのは、高校時代に進路選択を悩んでた時期に原宿へ遊びに行ったときですね。ふらふらと歩いていたら当時の代々木体育館に辿り着いたんです。歩き疲れていたのに、血が逆流したかのように、身体中に電流が走りました!
あの印象的な建物に出会ってしまったんです。

Quma おおー!

水野 建物で影響を与える人間ってすごいな、と思いましたね。
調べたら、都庁とかフジテレビをつくった建築家だった。それで、建築家を目指してみてもいいなって思って建築学科に進みましたね。

Quma 強烈な原体験。

水野 それから、大学を卒業してから10年ぐらい設計事務所に勤務した後に独立しました。独立してからは住宅をずっとやっていたわけではなく、プロダクト設計・デザイン分野もやって展示会で発表したりしながら仕事を探していました。

Quma 椅子とか家具もデザインされていたんですね。

水野 はい。設計士や建築士と言っても独立したらすぐに住宅や建物の仕事ができるかというとそうでもなく、大体は知り合いとか親戚の家を建てるところからやっていくことが多い。最初は住宅の仕事があまり見つからなかった時期もありましたね。そのとき家具をつくっていたのは、身近なものの延長線上で、空間があると思ったからです。
昔の人は、食料を得るために道具をつくり、そこからものづくりがはじまって、住まいがある。祠だったものが、家になった。人の暮らしの原点は道具なんです。

Quma 歴史から深ぼっていくんですね。

水野 独立してはじめて依頼がきたのは、震災後の福島などの仮設住宅でも設えることができる「神棚」のデザインでしたね。

Quma おお!珍しいですね。

水野 沿岸部や山間部を中心に住んでいた人が被災されていたこともあって、“自然と生きる”とかアニミズム的な思想が強かったから家には必ず神棚があるという人が多かったんです。でも、仮設住宅の限られた空間に大きな神棚を設置するのは難しい。だからこそライフスタイルに合った、コンパクトで現代的なものをデザインしました。

グッドデザイン賞を受賞したという「かみだな」は水野さんの代表作

Quma 暮らしの道具の中でも思想の部分で役割をもつもののデザインってとても考え甲斐がありそうですね。

水野 とっても難しかったですね。
その後、椅子を発表したときに、住宅の仕事をいただきました。それが中古マンションのリノベだったんです。

Quma なるほど。設計士といっても、プロダクトデザインの設計をすることもあれば住宅をやったり、商業施設をやったり、色々なんですね。

相手に応じた、それぞれのベストを描くこと

Quma リノベを手掛けるうえで、コミュニケーションで気をつけていることはありますか?

水野 まず、誰に対しても否定はしないことですね。
やっぱり自分の案を否定されたら気持ちよくないですよね。「この案は無理かも」と一回考えてしまったらそれが一点張りになって可能性をつぶしてしまう。

大体の場合、まず物件の間取りの情報をいただくのですが、さらっと見るだけにしておいて打ち合わせに臨むんです。「こういう空間にしたらよさそう」とかを考えず、スポンジのような状態で意見を吸収できるようにしておきます。
自分自身の枠に囚われすぎると偏ったものになってしまったりするし、あくまでお客様がいて、僕はそれを形にするために、どういう風に表現するか改めて考え始めるんです。

Quma なるほど。ただ意見を聞くと言っても、スタンスによって考え方とかも変わってきますもんね。

 

水野 それこそ、人によってパターンを変えてますね。身近な仕事で例えるなら美容師みたいな。
「こういう髪型にしたい!」っていうイメージがはっきりしていたら「ボリュームあげるのも似合うと思いますよ」とかイメージをベースに提案をしたりするし、ノープランで「好きなようにカットしてください」っていう人に対しては、じゃあ「僕の思い通りに!」と勝手にはやらず、その人の理想をコミュニケーションで手探りしていって提案をしていきます。

Quma うんうん。やっぱり人によってイメージも違うし、相手をしっかり理解するということなのでしょうか。

水野 そうですね。

Quma QUMAではM様邸のリノベで設計をしていただきましたね。このときはお施主様自ら壁を塗装したりということもありましたが、いかがでしたか?

お客様の要望をスポンジのように吸収し、それぞれの暮らしに合った提案を。[vol.2-設計士水野さん編]

水野 M様はご自身でこだわりを持たれていたので、基本はそのイメージをベースに考えていきましたね。セルフDIYをされるというパターンも初めての経験だったので、勉強になりました。

Quma 担当は僕ではなかったので聞きたいのですが、DIYに関しては結構水野さんからアドバイスや指示を出されたりとかでやったりしたんですか?

水野 多少かな。素材の相談にのったりしましたね。モルタルのような仕上げにしたいと聞いていたから「この塗料がいいですよ」とかそういったところを。

Quma キッチンはシステムキッチンを入れずに造作したとのことですが、これはどのような経緯があったのでしょうか。

水野 ご主人も奥様も二人ともキッチンに立つことも多いようで、「広いキッチンが欲しい!」と仰っていたけど、システムキッチンを入れると予算とのズレが生じるということで考えた結果、造作でつくることにしました。

キッチンもレールに棚板をつけるスタイルにすることで可変性の確保とコストを考慮されたそう。

 

Quma 造作でシステムキッチンよりも価格が抑えられるようになるっていうのは、革新的ですよね。造作するというと、既製品よりも費用が高くなる印象をもつ人も多いはずです。

水野 「広いキッチンでステンレスに」というご要望だったので、上の天板だけはステンレスにして、下は造作でつくりましょうという提案をさせていただいて。
その結果、コストもおさえつつイメージは崩さないということができたと思います。

Quma そうですよね。リノベは大きな金額の買い物になるからこそ、予算の調整は「自分だったら何にお金を使うか?」を考えながらお施主さんの目線に立って慎重に提案しています。

水野 やっぱり、リノベは素材とか中身にこだわっていくと予算は限りなくなってしまうので。要望をベースにして、「予算内ならこれがおすすめ」「こだわるなら予算アップでこれがおすすめ」とか選択肢をもてるように風呂敷は広げるようにしていますね。

Quma そこの絶妙なバランス感覚は、水野さんをとても信頼しているとQUMAの他スタッフからも聞きました。

時代の変化、暮らしの変化に余白的空間を

Quma リノベは時代性や流行が反映されるのが早いっていうのは聞いたことがあるのですが、新型コロナウイルスとかでもやはり変化の波が設計士さんのところにもきていますか?

水野 住まいの形も社会情勢によって常に変わっていくというのは、やっぱりありますね。「ワークスペースをつくってほしい」とかは、今携わっている案件でも増えています。

Quma やはりそうして反映されていっているんですね。

水野 リノベはいろいろな影響を受けていて、生活スタイルの視点で言うと日本にカフェ文化が根付いたのもあって、カフェっぽくしたいっていう人が多くなっていますね。社会情勢もしかり、文化とかも大きく反映されますね。

Quma 昔って空間のイメージを伝えるときは、アジアンとかヨーロピアンとかそんなイメージだったものが、今は明確になってきているのでしょうか。
今は、カフェが好きな人がリノベしたい人が多いのかもしれないですが。

Quma 「空間」が好きっていう人が増えてるのでしょうか。

水野 そうですね。気取らないでいたい、とかそういうのが現れていると思います。

あとは、何にでも使えるような空間をつくるというのも、リノベならではなのではと思いますね。個室的につくるのではなく、空間づくりのポイントにしたいっていう人が多くて。リビングの一画をそういうところにしたり。
リノベするってなった段階にお子さんが小さいうちの方が多いから、お子さんが小さいときはワークスペースで、大きくなったら子ども部屋にしようとか。新築マンションにはあまりそういう空間はないですよね。

Quma そういった空間づくりでは何を気にされるのでしょうか?

水野 定番としてあるのは室内窓をつけたりですね。リビングを見渡せて、家族の気配を感じることができるとか。オープンな空間づくりは求められていると思います。

Quma 1部屋というよりかは、0.5としてカウントされるようなひとつの空間というか。

水野 ですね。どう使うかはお客様次第だけれど、「こういう空間には、こんな使い方もあんな使い方もありますよ〜」とかこちらでビジョンを描いてあげて、イメージしてもらうといいねっていう話になったりしますよね。

Quma これからどうなっていくのかも、すごく楽しみというか、フルスケルトン状態が流行ったりすることもでてくるのでしょうか…!(笑)
最後に、水野さんは設計のあらゆるジャンルのなかでリノベを手掛ける理由はありますか?

水野 惹かれる理由っていうより、社会のニーズがそうなっていると思っています。
自分のライフスタイルに合った生活を送りたいし、何千万円というお金を払うのに元から決まりきったものに住むことに満足できない人が増えたんだと思います。

働き方も、家に住む人もそれぞれだし、それに合ったものをつくると思ったら、中古リノベのニーズが高まっているんじゃないかなあって。

Qumaとても納得です。やはりだんだんと新しいスタンダードになっていってるのだと感じます。

水野さん、ありがとうございました。

設計士という立場ならではのリノベトークを楽しんでいただけたでしょうか。

実際にQUMAのリノベで水野さんを設計士として迎えることもできますので、過去の事例もぜひご覧くださいね。

お客様の要望をスポンジのように吸収し、それぞれの暮らしに合った提案を。[vol.2-設計士水野さん編]

水野さんが設計したホステルFeel浅草

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